嵐などで絶えず変化する応力を受けると
ジオデシック構造の圧縮材には
圧縮力だけではなく、非同時的に張力もかかる。
応力を受けてもつねに張力材には張力しか存在しないと同時に
圧縮材にはつねに圧縮力しか存在しない構造が存在する。
テンセグリティ構造の発見には
新たな概念の発見を伴っていた。
つまり、圧縮材には圧縮力のみがかかるという概念操作が
張力材は張力のみがかかるという
実際の非鏡像的な物理現象を引き起こしたのである。
単なる思考言語からは
この新しい現実を誰も発見することができなかった。
テンセグリティ構造をジオデシック構造の原理よりも
早く発見したバックミンスター・フラーのモデル言語は
理解よりも先行して生成されていたはずでる。
新しい現実は後に言語によって理解されるが、
その理解はモデル言語が生む現実とは隔たりがある。
実際、ダイマクションハウス(1944年)の量産化からの撤退後の数年間
デザインサイエンスに関するクロノファイルは
ほとんど存在していない。
彼は多軸テンセグリティ原理の発見(1949年)まで
シナジェティクスのモデル言語の起源を遡る過程に深く没頭しているのである。
モデル言語とは<実在と過程>そのものへ向かう探査なのである。
そしてこの探査なくして
21世紀にシナジェティクスは存在しない。