主観的エコロジー

エコロジーの起源は、ダーウィン一派の適者生存説を推進していた動物分類学の権威ヘッケルにより、生物学の一専門分野として創設されたにすぎない。

科学で偽装したエコロジーは先験的主観性が決定的に不足している。

人類にとって、主観的エコロジーとは、
水、食料、エネルギー、住居の4つの要素からなる
他人を犠牲にしないテクノロジーの総体である。

安全装置(fail safe)

動物には、匂いで危険を察知する能力がある。
人間の体にも、不慮の事故や故障に備えて、ある種の安安全装置(fail safe)が内在している。
生命には、生存するためのあらゆる種類の代替的な回路が与えられている。

都市化されたインフラに過剰に矯正され続けた野生の安全装置でさえ、
大災害時にこそ、瞬時に機能するはずだ。

3.11の朝、薪ストーブの煙が急に排出しなくなり、室内になんども煙が
充満した始めた時、私は大気圧の急激な変化の可能性に気づいていた。
煙は圧力の高い場所から低い場所へ移動する。

私はいまもその現象を、シェルターに備えるべき
<自然の空調システム>に変換しようとしている。

構造自体に内在するもっとも優れた安全装置(fail safe)は
テンセグリティシェルターである。

最小限の方向舵(trimtab)

自分自身の経験に基づいて判断された真実に
最も鋭敏な直観のみで反応していくにしたがって
モバイルシェルターを所有(あるいは設計・制作)し、
天頂部までの星空を見ながら生活することが
その直観的な意識をより拡大する
もっとも効果的な最小限の方向舵(trimtab)であることに気づくだろう。

私の場合は、その気づきはシナジェティクスへの序章だった。

独自で自律したシナジェティクスの研究には
キッチン+バス・トイレのあるモバイル・シェルターはもっとも有用だ。
不要な生存条件を削ぎ落とした内部空間は、
野生の思考を始動させる宇宙と自己とを媒介するための
最初の環境制御装置なのだ。

自然の構造

自然の構造は、
それ自体を通過するエネルギーによって
構造の強度と剛性をより増加させる機能を自動的に形成する。

権力構造もまた、
権力自体の行使によって構造自体を強化し
自然の構造の永続性を模倣しようとするが
権力者の意志と目的が生む放射エネルギーが
つねに介在することで
非・自然として存続する。

平均的な革命

 「宇宙はテクノロジーである」そして「物理的宇宙は、
それ自体がすべてのテクノロジーを生み出している。」

このフラーの確信によって、
あらゆるエネルギーの無料化を達成できるテクノロジーを
支配する世界権力機構が科学者フラーを徹底的に孤立させた。

なぜなら、すでに発見された宇宙のテクノロジーに依存すれば、
「個人が必要とする(もの)はすべて、すでに支給されている」
という事実が露わになるからである。 


『宇宙エコロジー 』平均的な革命 梶川泰司 2004
(バックミンスター・フラー+梶川泰司=著 18、19ページ)

再考)住宅の空間機能について

住宅の空間機能は人間の意識を
矯正する空間になるばかりか
精神病を発現させる可能性が高い。

仮設住宅でその隠れた機能は
短期間に、そして
最大限に現実化する。

本来の空間機能は
物事の在り方に気づき、同時に自己との関わりを向上させる。

自分の住み家を、自分で作り出し
自分で管理し、修理できない哺乳類は
人類だけである。
住み家制作を専門分化し、その所有のみに従事したのは
怠惰に矯正された結果である。

これまでの住宅の空間機能に
エネルギーと食糧、そして水の包括的な再生装置が
まだ組み込まれていないのは、
意識的な進化を自負する哺乳類としては、もっとも不完全で
不健全である。

システムの優位性とは何か

モバイル・テンセグリティの現実的な居住空間に関して、
都市での労働や健康という概念、コストと耐久性との対比、
国家が定義する耐震性、
そして食料とエネルギーを貨幣で買う経済システムの優位性を放棄しなければならない。

銀河系での惑星地球システムの希有な優位性と
バイオシェルター内部での
植物の光合成によるエネルギー経済が忘れられているかぎり。

自己同型性(モジュール化)

構造は、圧縮力よりもはるかに張力によって制御され
張力は、その圧縮力によって個性づけられる相互関係を形成する。

それによって、圧縮材のみが外力に対抗する段階が完全に消失する。

圧縮材と張力材のそれぞれの自己同型性(モジュール化)は、
構造の統合力の現れであり、その物質的手段なのだ。

構造のモジュール化を形成するのは、
対称性に関わる数学であり、エンジニアリングである。
つまり、シナジェティクスへと接近する。


レゴ(=LEGO)は、物質構造のモジュール化に失敗したもっとも貧弱な自己同一性の教材である。)

広大無辺に拡がった虚無という企て

貨幣経済学が、自然資本(海による膨大な二酸化炭素の吸収力や酸素や水など)と
自然エネルギーを貨幣価値に換算しようとしないのは、
宇宙とは広大無辺に拡がった虚無ではなく、
統合されたテクノロジーの集積であるという現実を隠蔽したいからだろう。

さらに、GNPの公的部門から外的コスト(公害対策費など)をすべて隠蔽する行為も、
1980年代から贈与経済学を完全に隠蔽してきたのも同じ動機だ。

シントロピーは、
広大無辺に拡がった虚無という人類の企てを無価値にする
非人格的な宇宙のテクノロジーである。

客観的に、 そして直接的に

内部と外部を共有する一つの形態が観察者の位置で凹凸で反転する
テンセグリティシェルターを覆う厚み100ミクロンの被膜が
内部と外部の境界膜を形成すると同時に
圧縮材に対して筋膜的張力の役割を担う。

振動して外力分散する構造によって
強度と剛性の飛躍的加速度を体感できる
テンセグリティシェルターの内部に日々生存するにしたがって、
シェルター内部に共生する植物の光合成による物質と非物質との相互作用から生まれる
シントロピー現象に客観的に、そして直接的に参加することができる。

科学の対象領域を拡張する認識方法としての
テンセグリティシェルターは、エネルギーと食料の生産装置でもある。

こうした自己と宇宙との関わりにおいて、
結果的に、これまで都市に大多数の人間を繋ぎ止めてきた
すべてのインフラを陳腐化することができる。

政治的イデオロギーだけで
巨大化した課金装置であるインフラは無価値にはできない。