日別アーカイブ: 2007年10月10日

アインシュタインの操作主義的方法論 2

彼らの操作主義には共通点がある。
〈操作主義的なプロセス〉は〈自明の理〉から思考を絶縁させたことである。
それゆえに、シナジェティクスは自らの孤立と孤高を飛び越えてわれわれを直観的な理解に結びつける。

第6章で紹介されるシナジェティクス・モジュール理論は、アナロジーを超えた素粒子論であるが、
これらのモジュールの発見こそは操作主義的数学を代表する収穫である。
シナジェティクス・モジュールにおける対称的分割から最初の非対称的分割を構成する概念は、
この収穫によってわれわれが分割を規定する経験的操作
または手段と同じであるという前提を見事に証明している。

(残念ながら、第6章では表面積と体積の<シナジー的誤差>を生じさせる
アインシュタイン・モジュールの紹介は省略されている。
新たな大型のシンクロトロン加速器が完成するまで、
アインシュタインを理解したと自負する物理学者たちは、
このEモジュールの存在には無関心を装っている。
エネルギーには形態がないという〈自明の理〉にしたがって。)

フラーの操作主義は、経験主義の成熟さを市民社会に求めなかったが、馬を早く走らせるために、
その鼻先に人参をぶらさげるタイプの実験科学者にとってもふさわしくない野生の思考が潜んでいる。
彼はプラグマティズムのように経験的に、観察という経験から原理を発見できるとは思わなかった。
『コズモグラフィー』で登場するモデル群は、数学的に証明可能な、
しかし美と直観に支えられた新しいメタフィジクス言語だ。
自ら構築した発見のインデックスさえ模倣しないシナジェティクスは、
ついに自然を模倣しなかった。

バックミンスター・フラーがアインシュタインの操作主義的方法論に深く影響されたことこそ、
誰にも似ていない理由である。

アインシュタインの操作主義的方法論 1

『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社2007)は
「アインシュタイン的宇宙の夜明け」から始まる。
第3章では、シナジェティクスの思考の独自性の根源がアインシュタインの操作主義的方法論に
深く影響されていたことが告白されている。
アインシュタインに面会したとき、彼の思考のパターンを分析して驚かせたフラーには、
すでにシナジェティクスの諸原理の発見の経験があった。
量産型のダイマクシオン・カーやダイマクシオン・ハウスをデザインする前に、
アインシュタイン自身が同意した科学哲学的な理論構築、つまり、1934年の予測的な論理に基づいて、
『月への九つの鎖』の出版前の手書き原稿でフラーが試みたことは、
最初の包括的なアインシュタイン論にすでに到達していたのである。

試行錯誤の末、偶然にある思考に到達し、さらにその思考を相対性理論とその方程式にまで
発展させたアインシュタインの思考の過程を分析し解釈した方法論こそは
初期のシナジェティクス原理の一つである。彼は思考の対象よりも思考の方法に注目した。
「従来の科学における視点とアインシュタインの視点(そして結果的に利用した方法論)とのちがいは、
〈制御された条件〉内に隔離して実験をしようと試みていた従来の科学とは対照的に、
実験に付随するあらゆる環境条件と出来事をつねに包括的に考察の対象としていたことにある。」

1947年のブリッジマンの科学的な操作主義(『現代物理学の論理』)よりも早く、
1927年の『4D』からこうした包括的な情報と鋭敏に焦点を合わせた情報の両方に
関心を向ける方法論を徹底化した結果、シナジェティクス諸原理とその相互作用の目録化が生まれた。
その具体的な方法論は、フラーの絶筆となった1983年このシナジェティクス入門書においても、
原理とその発見へのプロセスが豊富な図版とともに記述していくシンタックスに反映されている。

その結果『シナジェティクス1,2』の出版後に発見されたモデルと概念が
『コズモグラフィー』で書き下ろされていることには驚く。
87歳の哲学者は操作主義の可能性に絶えず挑んでいた。