デザインサイエンス(バックミンスター・フラー)」カテゴリーアーカイブ

Tensegrity & Integrity

テンセグリティ(tensegrity)の恐るべき誠実さ(=integrity)とは
構造的、数学的、経済的に、どんなに優れた構造とパターンを築こうとも
製作者の内なる意識が統合的に宇宙的に秩序だっていないかぎり
その無秩序さが外部の圧縮力との張力調和を
無残にも圧倒してしまうことにある。

シナジェティクスにおけるエンジニアリングとは
誠実さの内部化なのである。
あるいは、
内部に起源を生む(=engine)行為そのものである。

My initial harvest of mathematical structures produced by this new conceptual tool was a family of four Tensegrity masts characterized by vertical side-faces of three, four, five and six each, respectively. The three and four sided masts consisted of discontinuous compression islands of tetrahedronal strut groups mounted only in tension one above the other, while the five and six sided masts consisted of local islands of icosahedronal and octahedronal strut groups mounted vertically above one another, again only by tensional connectors. 
by R. Buckminster Fuller 1961

シナジェティクスとデザインサイエンス

彼らは森の近くの同じ家で生まれた。
一方は裏口から、もう一方は表口から出かけた。

バックミンスター・フラーではなく
モルモットBによって、
地図のなかった森への最初の入口が発見されて
まだ1世紀を経過していない。

モルモットBはテクノロジーである。
シナジェティクスとデザインサイエンスを包括する
<自己のテクノロジー>である。
            
シナジェティクスからデザインサイエンスではなく
シナジェティクスとデザインサイエンスは
相補的で、そして非鏡像的である。
                  
                     梶川泰司

<動く生産ライン>———デザインサイエンス序説1

船舶を生産するデザイナーは、各国のドッグで移動しながら生産する最初の生産ラインを発明した。
現代の自動車の生産ラインは、地上に固定されているように見える。
しかし、陸路の流通経路を各部品が流れることによって、
船舶の動く生産ラインのように相対的に<動く生産ライン>を形成してきた。
そして現代のオンデマンドにみられるように、
すべてが移動しながらアセンブルできる陸路、海路、空路による生産ラインに転換されつつある。
流通経路を支配する組織は、衛星ネット上で個々の注文を受けながら、
トラックという動く分散型倉庫から直接販売店に配送するまでの輸送システムを持っている。
これらは、動く生産ラインの変形システムである。
生産も消費も、動く閉じた柔軟な関係、つまり流体地理学的な世界観を急速に形成している。
そして教育と労働だけが、毎日同じ場所への通学と通勤を余儀なくさせられている。
これは21世紀に継続された反流動的で固体的な世界観である。  
<犬のしっぽブログ 梶川泰司 2007年1月29日 から全文引用 >

その後6年間が経過している。

テンセグリティシェルターは
その本質的なより少ないより軽量な構造部材によって
家庭やスタジオから24時間繋がる
動く生産ライン(バックミンスター・フラーの時代にはまだ未発達であった)によって、
その開発力と生産力は
より少ないエネルギーでより加速されている。

テンセグリティの懐胎期間

バックミンスター・フラーが1949年から開発したジオデシックス理論は、
圧縮力を基本とした構造エンジニアリングを放棄し、
張力を圧縮力と統合するエンジニアリングに挑戦した結果生まれている。

それこそがテンセグリティの懐胎期間に重なるのであるが
その経緯はあまり知られていない。

バックミンスター・フラー以外に誰も個人住居に対して
テンセグリティ原理を応用する可能性に
挑戦して来なかった歴史に関係するだろう。

単位体積あたりの重量をより軽量にするための
ジオデシックス数学を創始すると同時に、
絶えざる構造実験によって、
1954年には構造の強度と剛性を飛躍的に向上させる
テンセグリティ理論を最初のジオデシック構造の特許に応用している。

テンセグリティは比類ないオブジェの
輝きでこの半世紀が過ぎている。

基礎部を必要としない純粋に自律するテンセグリティ構造は
まだどこにも存在しない。

シナジェティクス研究所 梶川泰司

複製されたデザインサイエンス

デザインサイエンスは
エンジニアリングやテクノロジーの応用だけではない。
あるいは、計画やデザイン以上のものである。

デザインサイエンスは生産過程だけではなく、
研究開発から製品の生産とその分配、つまり全世界的なサービスシステムに
に関する全体的な現実化のための計画(=クリティカルパス)とその責任を含む。

21世紀のグローバリズムは
搾取と支配による圧倒的な他者の犠牲と環境の破壊を伴わなければ
1927年に創始されたデザインサイエンスの概念を
忠実に複製していることになる。

バックミンスター・フラーのデザインサイエンスは
土地資本主義からも金融資本主義からも
そして共産主義からも生まれなかったのである。

エフェメラリゼーションについて

<形態が機能に従う>デザイン理論(=バウハウスの中心思想)の終焉は
バックミンスター・フラーがテンセグリティ原理の発見とそのモデル化と共に、
エフェメラリゼーションとして概念化した瞬間から始まっていた。

つまり、真の機能は非物質化する傾向を見抜いた瞬間から
形態は機能にとって二次的な要素となったのである。

大量生産の前提を構成する工場設備には依存しないこの産業革命は
情報量にも依存しなかった。

哲学が産業に影響を与えるほど普遍的な問いを発する
最初のメタフィジックスの時代にいるのである。

クリティカル・パスの解決方法  

その1

クリティカル・パスの問題解決方法は、

1.いつまでに何を成し遂げたいか

2.いつまでにどのように成し遂げたいか

という2つの要素から成り立っている。

つまり、方法と経験の秩序化の過程(あるいは工程)の全履歴を

行動によってのみ客観的にかつ動的に形成(あるいは記述)することが目的化されている。

その2

プリセッション

クリティカル・パスの過程において、

本来の目的外の異なった問題とその解決方法の発見に遭遇できた場合は、

上記の2つの要素が選択されるまでの履歴だけではなく

クリティカル・パスを必要とした動機にまで遡れるだろう。

その3

上記の方法は、発見的クリティカル・パス方法であり、

従来の帰納法的(induction)とも演繹的方法(deduction)とも異なっている。

決定的な違いはクロノファイルの有無にある。

梶川泰司

経験(experience)から実験(experiment)へ

モデリングは実験すればするほどうまくいく。

経験(experience)と実験(experiment)との違いは
現象に対する「主観的な傍観者(経験)」と
「無干渉的な観察者(実験)」であるとするような
対比可能な関係にあるのではなく
実験が「実在に意図的に参加する(=「自己の外」へ出る)」
ことであるという点において
根本的に経験とは異なっているのである。

概念操作の違いから生まれる異なったモデリングの経験から
異なった実験的な、それゆえ客観的なモデリングを発見できるだろう。
実験的なモデリングによってのみ
構造とパターンの未知なる関係が明らかになるのだ。

蝿の目(Fly’s Eyes)

☆バックミンスター・フラーのフライズ・アイズ

蝿の目は、三角形化を採用していないので、未だ自律的構造ではない。

その形態のパターンを拡大しても人間は内部空間を利用できない。

自然の形態を模倣する行為は、デザインサイエンスではない。
デザインサイエンスは、自然界に潜む純粋な構造とパターンに関する
シナジェティクス原理の発見に根ざしている。

Fly’s Eyes have no structure

Fly’s Eyes