do more with lessの定義やテンセグリティ・シェルターのデザインについて、
そして、
自然が採用したすべての概念が視覚化できる包括的な数学的座標システムを
提示するシナジェティクスを理解し、効果的に応用するデザインサイエンスについて、
「テンセグリティ理論」カテゴリーアーカイブ
2種類の more with less
経済人が策定する人件費の削減は誰かの犠牲によって達成されるかぎり、
古典的な合理化である。
製造工程の省力化に関する発明によるコスト削減策は、
予測可能なロジスティックで達成される more with lessである。
テンセグリティ・ジオデシック構造の分割数の増加に関して、
理論的には限界はない。
もちろん、より多くの機能を提供する際の予測可能なロジスティックにあるが、
構造が大きければ大きいほど、
分割数の増加に伴って部材の局所的な扱いがより簡単になる。
この分割数の増加によって、製造コストやアセンブルコストの<級数的な削減>を達成し、
同時に、システムからリダンダンシーを理論的にも排除できる。
つまりテンセグリティ構造の半径の増加に伴う単位体積あたりの
劇的な製造コスト削減において、
社会的経済的な犠牲は伴わない。
これこそが、予測不可能な more with lessである。
この予測不可能なmore with lessを達成した分割方法によって、
テンセグリティ・ジオデシック構造の構成要素のデザインは、
つねに同型のユニットの増加をもたらす。
articulationという原理と原理と調整を果たすためにのみ、
デザインという物理的次元が与えられるとも言える。
コスト削減によって構造のプライム・デザインが犠牲になる場合は、
発見されるべき more with lessも犠牲にされていると考えて良いだろう。
テンセグリティの自動張力調整機能
テンセグリティはジオデシック構造に比較すれば
ジョイントレスであると言われてきた。
なぜなら、テンセグリティのジョイントは張力材自体である。
本質的にテンセグリティ構造はジオデシック構造よりは最軽にデザインできる。
しかし、ターンバックルでテンセグリティの張力調整機能を代行させている限り、
最軽量にはほど遠くなる。
自然がテンセグリティの張力調整をテンション毎に
取り付けたターンバックルでするとは思えない。
ターンバックルのないテンセグリティモデルの制作には
高いエンジニアリング以上に新しい理論が必要だ。
シナジェティクス研究所のテンセグリティ開発チームは、
これまでになく均一な張力で統合された超軽量テンセグリティ・シェルターの
プロトタイプの開発に成功した。
ターンバックルを完全に排除しても、テンセグリティの張力を
自動調整する機能を形成するための新たなハードウエアは不要だった。
さらに、この張力材の重さに対する強度の増加が構造システムの
エフェメラリゼーションを加速する場合は、
張力材がそれ自体を構成する炭素の原子構造の原子間引力のモデリングにより
接近した証明になるだろう。
自然は、機能の増加のための解決策を新たな部品数の増加や重量増加に求めない。
(その結果、増加する質量は原子数や原子核の殻構造のように
つねに整数比で自己形成する。)
参照
自然のエンジニアリング
テンセグリティの振動数(frequency)
30本の圧縮材からなるテンセグリティ球の各張力材に
ターンバックルを使用し、そのターンバックルを回転させて
すべての張力材に徐々に張力を増加させていく場合、
弦楽器の弦のように張力材を弾く毎に、
弦が発する音はより高音になっていく。
そして、ついにわれわれの聴覚では聞き取れないほどの音域に達する。
この段階を体験すれば、だれでもテンセグリティ球が
柔軟さのない剛体(rigidness)を形成していると感じるだろう。
言い換えれば、剛性のある構造は、
冗長度(redundancy)からではなく、
聴覚的に変換できないほどの超高振動数(frequency)によって形成される。
基底状態にある原子の発する光が、
特定の振動数のみに限られるのは、同じ理由からである。
そして住宅は、この剛性を木材やコンクリートや鉄に求めてきたが
それはつまり、振動を打ち消すことを
補強材という冗長度に求めてきたからである。
自然は構造に補強材を使用しない。
自然は構造に振動数を利用する。
テンセグリティ原理について
これまで間違ってバックミンスター・フラーの言質とされてきた
19世紀的な還元主義の<Think global, Act local.>は、
人間だけのうぬぼれた同時的な行動パータンに陥りやすく、
他の部分と分断され孤立し、最終的に支配されやすくなるのである。
<Think global, Act local.>は、
非構造的であり、モデリング不可能である。
そして、構造の安定化にはほど遠くシンタックスの乏しい命令形である。
本質的にゴムバンドのような弾性的ではないテンション材によって
テンセグリティ・モデルを構成した場合、
圧縮材と張力材の各部材間のすべての相互作用をみれば、
次のことは明確に理解可能である。
すべての部分は、それぞれ他の部分に非同時的に作用している。
あるいは、全体を変えることなくしてどんな部分も変化しない。
バックミンスター・フラーならこういったに違いない。
<Nothing can change locally without changing everything else.>
More with Less
大きなものは、リダンダンシーによって崩壊し、
小さなものものは、More with Lessによって成長する。
この場合、More with Lessは、経済的な節約法ではない。
無駄を排除する自然の機能である。
振動
物質とエネルギーが互いに作用し、
より秩序の高い状態になる現象に振動がある。
例えば、原子は絶対零度においても静止することなく振動している。
(ヘリウムは絶対零度近傍でも振動する。)
結晶質では格子振動となる。
こうした零点振動や格子振動はテンセグリティ構造が原因である。
テンセグリティ構造は、
周囲の環境と共存した状態を形成するために
つねに振動するシステムである。
自然は振動というmore with lessを採用する。
振動は構造をつねに軽量化すると考えられる。
そして人々が住居に
無振動の静止的な固体的建築を望んでいるかぎり、
周囲の環境と共存する非平衡系の
真のエコロジー的解決策には到達しないだろう。
プライムデザイナー
細胞膜という概念よりも前に顕微鏡が発明されたが
最初に細胞をスケッチした科学者は
最初の細胞学者にはなれなかった。
見えている通りに客観的にスケッチしても
概念がなければ、発見は証明できなかったのである。
概念は道具によって証明できるが、道具よりも早く形成できる。
われわれの細胞もテンセグリティから構成されている。
しかし、顕微鏡で細胞がテンセグリティであることを証明する科学者は
1980年代の初期までいなかった。
バックミンスター・フラーは、
細胞がテンセグリティであることを知る
30年前にテンセグリティ構造とその概念を発見している。
バックミンスター・フラーは
こうした芸術家・科学者(アーティスト・サイエンティスト)たちを
プライムデザイナーと呼んでいる。
移動用のテンセグリティ・シェルター
固体的な城砦都市国家よりも
移動可能な小さな船の兵站線の方が優位である。
移動する風や太陽光からエネルギーを変換できるからだ。
移動中に食料も栽培可能だ。
この方法は大気圏の内部と外部にも適用可能だ。
ただし、大気圏内の陸地を移動する場合は
シェルターで十分だ。
このシェルターの機能は、テンセグリティ原理以外では達成できない。
重量 30 kgのこのテンセグリティ・シェルターの
プロトタイプを明日から私の仕事場から
900 キロ移動させて組み立てる。
テンセグリティ構造システムの耐久性は30年以上あるが、
この新しいテンセグリティ原理と機能の証明は、実験あるのみである。
つまり、それで生存することだ。
プロトタイプとは鋳型であるが、
テンセグリティの鋳型は不可視の原理である。
公開は11月27日から12月 3日まで
スパイラルにて
DO MORE WITH LESS
[ザ・ノース・フェイス40周年]
◎この新しいテンセグリティ原理についての講義は、
12月 2日午後19時から
(チケットは完売となっているが、まだ立ち見席限定のチケット有り、問い合わせは下記に)
自然の隙間
テンセグリティは隙間だらけだ。
その存在は軽くはかなく見えるが、
これほど単純で強靱な美しい有機体はない。
それは人間のデザインではないからだ。
陽子と電子を隔てる距離に接近した最初のモデルだ。
テンセグリティに関するすべての機能は発見されたものだ。
構造の自然はまだ半世紀しか経過していない。
ザ・ノース・フェイスのDO MORE WITH LESS展で
テンセグリティに関する<新しい振動>の機能を
原寸大のプロトタイプで展示する予定である。
その理論に関する講演は
12月2日、午後7時から 定員30名
講義 梶川泰司(シナジェティクス研究所)
詳細は
http://www.goldwin.co.jp/tnf/40th/
場所 スパイラル
http://www.spiral.co.jp/