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テンセグリティ構造とアンチ・リダンダンシー

リダンダンシー(Redundancy 冗長性)は、語源的に波立ち、あふれでて、流れ帰る状態を意味する。
遊びや余裕、余地を意味し、遂に人間が建造物や機械類・システムの設計において、
緊急事態に備えて付加するモノを意味するようになった。
地震などの緊急事態以外では、過剰なモノでもあるが、
システムの構成要素の一部が故障してもシステムとしての機能がまっとうできるように
余分な構成要素を完全に省略できるデザインはないという前提を支持してきたのは、
われわれの生命の安全を保障するためである。

ところがこの概念では、テンセグリティ構造を説明できない。
過剰なモノはすべて排除した構造でありながら、テンセグリティ構造は、
振動数というきわめて純粋な原理に基づいてデザインされた
真のニューマティック構造である。

これまでのテンセグリティ構造の発見によって、設計者が定義するリダンダンシーは、
計画的陳腐化を擁護する疑似科学理論となった。
ビジネスでは、余計なコストの集積を合法化するための巣窟となった。
なぜなら、航空機産業以外で定義されるリダンダンシーは、
専門家を利用した生命の安全を保障する記号的な疑似テクノロジーで、
隠れた余剰生産を専門家集団に提供できるからである。

リダンダンシーを否定する構造システムと対立しているのは、
もはや古い構造理論ではなく、われわれの暗黒時代から継承されている
輪郭が不明瞭な社会システムそのものである。

テンセグリティ構造は、<でたらめさ>と<冗長度(リダンダンシー)>をあらかじめ未然に回避できる唯一の理論である RBF『コズモグラフィー』(2007年6月近刊)

自然は、 do more with lessによってアンチ・リダンダンシーを選択している。
それこそが、自然に内在する先験的デザインなのである。
自然の冗長美は、われわれの無知から、波立ちあふれでて流れ帰る状態に見えているだけである。  Y.K

テンセグリティのヤング率は誰が決めるのか

力が働いても、形が変わらないように見える物体は剛体と言われている。
それに対して、力が働くと形が変化するように見える物体は弾性体と言われている。

物理学が、すべての固体が弾性体であると定義した瞬間に
すべての物体において理想的な固体は存在しなくなる。
弾性体には必然的に相対的な硬さの値を表すヤング率が存在する。
合金でさえ原子間の凝集力が弾性的性質を決めている。

テンセグリティモデルの弾性的性質を自由に決めて良い場合、
張力体をゴム材で構成することは、
自動車のタイヤをタイヤよりもヤング率の大きい金属や木でデザインするようなものだ。

つまりエンジニアリングの決定的な欠如があるのである。

自然が構造の作りやすさのために、原子間の凝集力を犠牲にすることはあり得ない。

フラーレンもナノチューブのヤング率も、
テンセグリティ構造以外では再現できないだろう。  Y.K

—ヤング率の比較—
ナノチューブ 1200
炭素繊維  345
鋼鉄 208
木 16
エポキシ 3.5
ゴム (1.5-5.0)×10-3
ポリエチレン 7.6×10-1             単位[GPa]

テンセグリティ球(30struts-Tensegrity)

テンセグリティ原理はモデリングによって学ぶことができる。
しかし、複数の経験によって理解できるのはずっと後だ。

私は、30sstruts-Tensegrityモデルを1時間以内に
誰もが簡単な説明で制作できるようにするという
私の最優先課題の解決までの20年間に、
300個程度の大小様々なテンセグリティモデルを制作した。
その内最大の直径は11mであった。

精密な張力材によるテンセグリティ球モデルの制作に従事した経験のある人なら、
この方法が革命的な方法であることに同意するだろう。
同時に、テンセグリティのことはまだよく分かっていないということに
異論はないだろう。  Y.K

無重力

テンセグリティを見て驚かないこどもが確かにいる。
その理論をテンション材がゴムひもからできた劣悪なエンジニアリングによるモデルで、
宇宙での応用デザインによる産業的可能性を論じる科学者もいる。

重力は断面積がゼロの究極の見えないテンション材だ。
見えない重力に驚かない科学者が確かにいる。
地球上の固体的世界観で無重力に憧れている生活をしているからだ。

彼らは圧縮材が浮かんでいるテンセグリティがどこか無重力的だと思っている。
理解と感性がしばしば分断された知識のままだ。
テンセグリティは引力と斥力の調和を最初に視覚化したモデルだ。
現在、電磁力にのみ、引力と斥力の両方が存在している。
重力には、引力だけが確認されており、斥力としての重力は確認されていない。
このモデルが、 1952年プリンストン大学で
統一場理論の探求に明け暮れていた物理学者アインシュタインを驚嘆させたのは言うまでもない。
しかし、この物理学の事件を、物理学者は知らない。

誰がテンセグリティ構造システムを発見したか

テンセグリティに関するサイト上で提供される情報に、
テンセグリティ概念とそのモデル化の歴史的事実認識に重要な誤りがあり、
それがこの数年間で常識化し拡大しつつある事態を
これ以上放置すべきではないと感じている。
1981年から2年間にわたってバックミンスター・フラー研究所の
膨大なクロノファイルを閲覧しているときに、私はテンセグリティのオリジナリティ論争に
直接触れた数回に及ぶ往復書簡を見つけた。
また、その関連するすべての書簡のコピーを入手した。

その書簡で、フラーとスネルソンが相互に合意した内容の一部を要約すれば、

1.
1917年、最初のテンセグリティをつくる10年前に、シナジェティクスを創始している。

2.
バックミンスター・フラーは1927年からは、ワイヤー・ホイール状のリムを平行
または同心円状に複合的に配置した段階にあったテンセグリティを、
マストから床を吊ったタワー型多階層構造物〈4D〉とダイマクシオン・ハウスに利用していた。

3.
フラーはケネス・スネルソンに出会う前の21年間、
発見したテンセグリティの概念化を求めて試行錯誤を繰り返していた。

しかし、現在のスネルソンはここまでの合意事でさえ、
合意していないような発言をしている。
「テンセグリティはスネルソンが最初に発見した」という彼自身の主張である。

手紙での合意事項から見れば、この主張の根拠は<死人に口なし>的に捏造されている可能性は大きいと言わざるを得ない。
クロノファイルはこうした事態を想定して継続されたものではないが、時系列的な事実確認こそが、
この種の混乱を解消する効果的で民主主義的な方法である。

テンセグリティのシミュレーションモデルの間違い

http://www.childrenshospital.org/research/Site2029/mainpageS2029P23sublevel2

このシミュレーションはDr.イングバーの細胞テンセグリティの原型モデルをシミュレーションした場合である。
これは、ゴムひもをテンション材にしたテンセグリティモデルにほとんど近似しているように見える。
本質的なテンセグリティモデルの機能を再現しているとはいえない。
そもそもシミュレーションは、現実に行う事が危険を伴う困難か、またはコスト的に不可能ある場合、あるいは種々の選択条件を量産前に検証する場合などで用いられるのであるが、このシミュレーションは特定要素をデフォルメさせているだけである。

テンセグリティモデルは、
テンセグリティが概念的に把握できていない以上、
テンセグリティのシミュレーションモデルをプログラムできるはずもない。 (実際彼らは、ゴムひものテンション材の市販のキットから理論を形成しているので、落下させても、ボールのようにバウンドすることはないだろう。テンセグ リティがテンセグリティを内包する場合のモデルの場合も実際のモデルを制作して比較すれば一目瞭然である。)

言い換えれば、構造としてのテンセグリティのこの種のシミュレーションモデルは、モデル化が不完全なので、現実のテンセグリティモデルを再現できていないのである。
テンセグリティがわれわれの想像力で類推できるほど、シナジーのシナジー乗が超越的であるのではなく、テンセグリティモデルを観察する側の、形態と概念モデルの差異が明確に再現されるのである。

本質的なテンセグリティモデルの劇的な外力の分散機能は簡潔に再現される。密閉された空気をもったテニスボールやサッカーボールのように、落下後に高くバウンドするといった単純で高度な相互作用に変換される。

テンセグリティ構造に関する間違った見解 その1

建築家は構造を扱う。
テンセグリティは構造体である。
したがって、建築家はテンセグリティを構造として公式に発言する機会が増えている。

ある石油会社のサイト(http://www2.cosmo-oil.co.jp/terre/09/01-02.html))に
以下の引用のようなテンセグリティの解説がある。

「シナジーの働きが具体的に目で見られる例としては、テンセグリティという構造システムがあります。
名称は「テンショナル・インテグリティ(張力による統合)」の略で、
圧縮材として働く複数の棒と、張材として働くゴムひもを組み合わせたものです。
棒はそれぞれ触れ合っていないのに、ゴムひもの張力(テンション)によって結びついて、
立体を作ることができる。6本の棒があれば、4つの正三角形からなる正四面体(テトラ)を作ることができます。
このシステムでできた構造体は、正三角形の形としての安定性も加わって、
上から落とされてもびくともしません。」
(下線部はこのサイトの<「宇宙船地球号」という概念を創出した科学者 バックミンスター・フラー>から引用
このS氏の解説には、テンセグリティシステムの説明で基本的な間違いは2カ所ある。
この間違った理解は最近のサイトを見る限り、かなり一般化しつつある誤解である。

1.ゴムひもの張力(テンション)によって結びついている。
2.上から落とされてもびくともしない。

1は、張力について基本的な条件が全く検討されていない。
ゴムひものようなエラスティックな素材からは、テンセグリティ構造を構成できない。
ゴムひものテンセグリティを床に落下させてもほとんどバウンドできないのは、
2点間距離を一定に維持する機能が、損なわれて、圧縮材が互いに接触することになる。
ゴムのテンセグリティモデルは動力学的に安定していない。

同じ理由から、テンセグリティトイ( tensegritoy)は、
90年代のバックミンスター・フラー研究所でも販売されていたが
科学的に間違った素材からデザインされた商品である。
(こうした批判から、本質的なテンセグリティ教材は
現在シナジェティクス研究所が主体となってデザインしている。)

2は、応力分散システムの機能について全く無知である。
テンセグリティは振動する共鳴型の構造である。
(実際、びくともしないのではなく、常にびくびくしている生きたシステムを構成している。)

正しいモデリングから容易に観察できるテンセグリティの真のシナジー効果に関して、
科学的記述を期待したい。
国内以外のこうした建築家の発言を、サイトや出版物から引用して、
このブログを含めた私の今後の出版物などで、あえて彼らの重大な間違いを指摘する理由は、
do more lessの究極の構造システムのであるテンセグリティ構造システムの可能性を
個人の有用性に還元しなければならない情況にいると感じるからである。

テンセグリティの導入は、次世代建築システムの最優先課題ではなく、
個人の生存にとって最優先課題の一つである。
自分の間違いから学ぶことはできるが、他人の繰り返される同じ間違いからも自らの理解を再検討できる。

テンセグリティ

少なくともスネルソンがテンセグリティのオリジンであると言及する研究者は、
バックミンスター・フラーとスネルソンのそれぞれの特許文献を一読もしていない
受け売り発言と見てよいだろう。

たとえば、スネルソンの圧縮材が非連続な柱状テンセグリティ
(現在もっとも知られているテンセグリティ彫刻)は、
バックミンスター・フラーの球状テンセグリティの発見を見てから後に
制作された事実すら知らないに違いない。

非連続な圧縮材のテンセグリティは
スネルソンは発明していない明白な事実こそ確認されなければならない。

そして、テンセグリティに関して未だ
その概念も十分に把握されていないと言わなければならない。
(デザインサイエンスのクリティカル・パス法、
さらにシナジェティクスに至っては他の星の文法のように感じられている。)

モデル言語

エッシャーの正則分割をエレメントの外形線の変容だけだ
と考えている人が多いのは、見える形にのみに集中するからだ。
シナジェティクスを学習すれば、構造とパターンが最初に見えるようになる。

形ではなく、言語によって脳内ネットワークの構造とパターン
が構築され変容されてゆく。

エッシャーは版画家であるが、実に多くのモデルを制作している。
このモデルとモデル言語は同一ではない。

デザインサイエンス

私にとって、デザインサイエンスに関われば関わるほど、
職業とはかけ離れるという事態を受け入れたのは、それほど昔ではない。
その時に、デザインサイエンスには、
未解決な膨大な仕事があるという認識に基づいた計画が生まれた。
それまでのように、論文発表する必要がないという試練も必要だった。

この10年間、デザインサイエンスは
バックミンスター・フラーの時代には起こりえなかった、
個人が入手し実践できるテクノロジーを理解し
統合することによって変化する現実を
どのようにして段階的に獲得できるかという
自己教育の問題に接近している。