一番だまし易いのは、観察者ではない。
2つ目がありながら、
同時に2つの対象物が認識できない目と脳の機能である。
例えば、一つの4面体を観察する場合、通常観察者は外部にいるしかない。
なぜなら、内部にいる場合、
同時に4面体のすべての頂点を捉える視野角さえももたない。
これは4面体と観察者との相対的な大きさの問題ではない。
ゆえに、4面体の内部と外部は同時に認識できない。
このことは、
ジオデシック・シェルターを組み立てる場合に顕著になる。
外部にいるアセンブラーは、内部の構造のパターンと互いに鏡像になるので、
完成したシェルターから見る自分を覆う総三角形のスカイブレイクに驚くだけではなく、
同時に一つの視野角で把握できない内部の構造パターンが
空間を心理的により大きく感じさせるのである。
閉じた球状パターンでは、内部の空間イメージは外部から想像する内部の空間イメージと
けっして合致することがないという人間の認識の限界に最初に気づいたのは、
アーティスト・サイエンティストである。
オスマン帝国が教会建築を取り入れ、球状空間によって
柱のない広大な礼拝堂空間をもつ建築様式を生み出した理由でもある。 Y.K