テンセグリティ ワークショップ」カテゴリーアーカイブ

続)予測的デザインサイエンス

発見された概念をモデリングで試しただけでは
実在する機能までも証明できない。

原寸大で試してみなければ。

バックミンスター・フラー以外のデザインサイエンスでは
つまり、1983年以後、
もっともエネルギーと時間がかかることが
一番後回しにされている。

無柱、無線、無管、無軌道へ

無柱、無線、無管、無軌道を同時に具現化する
4つの自律的な方法は
自己のテクノロジーが深く関与する。

税収奪システムからの回避バイパスではなく
自己と他者との包括的な相互関係こそが
自己と宇宙との実在する相互関係に及ぶ。

この自己規律なくして
4つの自律的なサバイバル方法は理解できないだろう。

ゼロ円ではなく
無柱、無線、無管、無軌道こそが
もっとも経済的なのだ。

テンセグリティの存在確率

より重要な部分をけっして形成しないで
付加的なリダンダンシーを排除したテンセグリティは
最高の知性が物質化した基底状態(garnd state)なのである。

それは自然(cosmic integrity)の方法であった。

人間の知性は
<つねに動的に統合された構造>を20世紀に初めて発見したのである。

プラトンの正多面体(solid)の静的な世界観から離脱するために
25世紀も経過しなければならなかった。

その構造は大理石よりも振動するがゆえに、より強度と剛性がある。

人間の生存空間が形成される時
電子軌道が電子の存在しうる空間であるように
その生存空間は圧縮材と張力材との相互作用による最も高い存在確率とみなされる。

実験装置としてのテンセグリティモデル

生命が自分の細胞を所有することではないように
テンセグリティ原理を理解するには
テンセグリティモデルを所有しないことだ。

テンセグリティを理解することは
テンセグリティモデルを制作するよりもはるかに困難である。

1995年にそれまで不可能とされていた
展開型のテンセグリティの完全なメカニズムを発明し
直径11mのプロトタイプを制作する過程で
100個以上の展開型のテンセグリティモデルを制作し
30種以上の新しい構造とパターンを発見することができた。
(そのプロトタイプの展開プロセスとジョイントのディテールの映像などは
『宇宙エコロジー』美術出版社 2004 P.352 などに記載)

しかし、テンセグリティを現在のように理解することはできなかった。

テンセグリティというもっとも単純な構造部材から構成された構造のシナジーは
まだ完全に言語化されていないのである。
反対称的な構成要素とは、圧縮力と張力の相互作用である。

種々の圧縮力と張力の相互作用を具体的な
実験装置としてのテンセグリティモデルにはまだ発見と発明が混在している。

この相互作用を新たな物理的な実験によって科学的に発見する時、
美的なテンセグリティオブジェは単なる副産物である。

発見的エンジニアリングは、実験者の内部で形成される物質化への過程にある。
美の複製は実験者の外部で形成されるかぎり、物質化の遅延を引き起こすだろう。

共鳴テンセグリティの起源

張力に対する反対称的な概念は圧縮力である。

圧縮力はその力の及ぶ物体に軸方向を定めようとする力である。
張力はその力の及ぶ物体どうしのある複数点間における応力を領域に展開する力である。

閉じたテンセグリティ球において
張力は線状の物体に対して加わる力の反作用力として 
線状の物体がその力を及ぼしている物体に対して加える力、
つまり圧縮力を生じさせているのである。

張力がなければ圧縮力は形成できないが張力は圧縮力が制御するテンセグリティは
明らかに、上記の張力と圧縮力についての知識から生まれたのではない。

共鳴型テンセグリティは動的なバイオスフィアと
絶えず共鳴しているもっとも鋭敏な外力分散型自動機械である。

この自動機械を構成する不連続な圧縮材を統合するための張力ネットワークは
自然の観察や自然の形態模倣からではなく
バックミンスター・フラーの独自な想像力(=モデル言語力)が再構成している。

人間の想像力だけが、テンセグリティ原理の知識と物質を統合できたのである。[梶川泰司]

☆外力分散型の稠密充填型テンセグリティ・ジョイント(特許)を使用した球状テンセグリティモデル
                      構造デザイン 梶川泰司 + モデル制作 嶋あゆ子

[解説]テンセグリティジョイントと柔軟な強度と剛性について

各圧縮材端部に形成されたテンセグリティ・ジョイントによって
外力分散を短時間に効果的にする動的なネットワークの機能を形成すると同時に、
テンセグリティ構造の強度が飛躍的に増大するのは、テンセグリティ・ジョイントの軸回転機能による。
さらに、強度の飛躍的な増大は同一のテンション材の破断の限界が劇的に向上していることを意味する。

柔軟な強度と剛性は、軸回転機能のあるテンセグリティジョイントとネットワークとの相互作用から生まれる。
                               

細長比(Slenderness ratio)からの離脱 その2

構造は圧縮材の相互結合によってのみ
自律すると考えられてきた歴史は
圧縮材として自然素材の岩石を選択したことから始まる。

岩石は大地と不動の関係(=重力によって自重をより大きな固体的な大地に流して振動を回避する)を
維持できるという概念は
20世紀まで生き延びたのである。

テンセグリティにおいては
張力材を介した圧縮材との相互作用によって
外力を振動エネルギーとして分散する機能に変換されるので
細長比はそのままでも坐屈の可能性はなくなるばかりか
ついにテンセグリティ球の分割数の増大と共に
その球の大きさには際限がない最大の自律的自由を獲得できる。

圧縮材には圧縮力のみが
張力材には張力のみが作用する純粋な機能分化を作用させるためには
張力ネットワークは
つねに連続していなければならない。
 
統合力は圧縮力にではなく
張力の側に存在するからだ。

蝿の目(Fly’s eyes)と球面波動

テンセグリティ以上に
何の秘密なく裸形で統合されている
構造とパターンは存在しない。

すべての外力分散を
振動に変換するパッシブな機能の維持に
どんなエネルギーも消費されていない。

システムを通過する外部エネルギーが
そのシステムをより強化する作用は
シナジー現象として認識できる。

☆蝿の目と球面
John Roach for National Geographic News
September 30, 2010

Dymaxionの語源

ダイマクションバスルーム、
ダイマクションハウス、
ダイマクションカー、
ダイマクションマップの”Dymaxion” は
DY (dynamic), MAX (maximum), and ION (tension)という3つの概念から形成された。

張力を物質または構造の表面に移動させることの有利さは”Dymaxion” 理論を
高度に単純化しかつ物質化したテンセグリティ理論にもある。

テンセグリティは、バックミンスター・フラーの1927年の4Dハウスを源流とする
“Dymaxion”の発明史の最後に位置する。